温故知新 ゲームボーイで楽しむ黎明期のアーケードゲームのこと
Back to the basic!
個人的になかなか忙しい毎日が続いているのですが、こうなってくるとなかなかゲームにも手が出せなくなってきます。特に据え置き型のゲームは、まず起動までに気合を入れなくてはならなくなってくるので、携帯型のゲームを少しだけ、という遊び方になってきます。
以前、スリープ・中断機能つきのゲームボーイアドバンスソフトについて書きました。機能としてのスリープや中断機能というのは間違いなく便利で、ゲームライフを豊かにしてくれたのは確かですが、一方セーブやスリープ、中断がなくても「あ〜面白かった」と言ってやめられるゲームというのもまた魅力的なのではないでしょうか。
そんなことを思っていると、ビデオゲーム黎明期の作品というのは、アーケードでの比較的短いプレイを想定しており、あっさりとしていて、それでいてプレイ後の満足感が得られるものが多かったように思います。2017年現在ではそんな時代のゲームをそのまま遊ぶというのはなかなか難しいものですが、今回はゲームボーイに移植された、アーケードゲーム黎明期の作品を少しだけご紹介したいと思います。
ヘッドオン(1990年/テクモ)
プレイヤーとなる車が、多重の円周状になっているコースを走ることで、コース上のドットを消していくというこのゲーム。コース上のドットを全て消すとステージクリアです。
原作は1979年のセガ作品で、パックマン(1980年/ナムコ)に先駆けたドットイートゲームの元祖という文脈で語られることの多いこのゲームですが、文字通り「ドットを食べる」パックマンのヒットがあったからこその「ドットイート」であり、ゲーム性の狙いとしては、敵車とのスリリングなやりとりに重きを置いたゲームなのではないでしょうか。
実際にプレイしてみると分かりますが、ゲームプレイ時の感覚として「ドットを全部消そう!」ではなくて「敵車にやられないようにしよう...」というのが先にあって、副産物としてドットをクリアするといった面があるのですね。
果たしてこの感覚はどこから来るのかというと、敵車の思考にあるのではないでしょうか。
この敵車、プレイヤーとは逆周りで周回を続けています。ミス=敵車との激突でして、つまり彼らは自らの命と引き換えに常時プレイヤーを「殺しにかかっている」わけなのです。もちろん多くのゲームでも敵の攻撃を受けるとミス、敵に触れるとミス、というものはあるのですが、プレイヤーと同条件(車vs車=ぶつかれば死ぬ)で正面衝突を狙い続けてコースを移動する彼らの一種異常な行動心理といいますか、執念といいますか、凄みを感じざるを得ません。
さてこのヘッドオン、ゲームボーイ版では5重の円周が4重へといったゲーム面での変更、BGMの追加が行われています。コースがコンパクトになってもシンプルなゲーム性は損なわれず、集中した比較的短い時間で行われるプレイは、おやすみ前の1プレイにはぴったりと言えるでしょう。正直なところ敵車が2台に増えてくると、個人的にはもうお手上げなのですが、今は寝る前に一戦それに挑むのもまた楽し、という。
なお、2017年現在、原作ヘッドオンをプレイするのであれば、プレイステーション2版の「セガエイジス2500シリーズVol.23のセガメモリアルセレクション」があります。
このセガメモリアルセレクションでは、当時の貴重な資料が見られるのですが、当時のフライヤーには「相手のコースを読め! 正面衝突をかわせ! 激突!! HEAD-ON」と書かれていることがわかります。激突!! しちゃダメ!
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クイックス(1990年/任天堂)
プレイヤーは画面内の外周からラインを引いていき、敵キャラクター「QIX」に触れないようにラインで囲んだ陣地を増やし、ステージに対し陣地が規定のパーセンテージを越えるとステージクリアとなります。
原作は1981年のタイトー作品で、アメリカで先行稼働していたものが日本へ入ってきたというものになります。
1981年といえば、ドンキーコング(任天堂)、ニューラリーX(ナムコ)、ギャラガ(ナムコ)、スクランブル(コナミ)など、現在においてもクラシックとして輝きを放つ数々のタイトルが生まれた年でした。各社がグラフィック表現を豊かにしていく中、このクイックスはシンプルなラインと塗りがステージのメイン要素。最大の特徴である敵キャラQIXも複数のラインの有機的な構造で表現されています。シンプルながら、むしろカッコイイ! そんな不思議なゲームでした。
内容も自機から引けるラインに高速・低速の2種を用意することで、クリアを目指す高速、スコアを目指す低速といった戦略性を味わえましたし、少しずつ少しずつQIXを囲んでいき、最後に陣地をつなげることで一気に99%でクリアする! というカタルシスもあり、決して派手ではありませんでしたが、ゲームとしての爽快感はかなりのものと言えるでしょう。
さてゲームボーイ版では、元々の縦画面をうまく落とし込み、基本的な要素をしっかり受け継いでいると感じます。
そんな中でも意外なのが4ステージごとのデモ(アーケードには無かった……はず)と、ゲームオーバー時のマリオ出演のデモ。任天堂として発売されたことで、こんなデモが差し込まれるとは……!
QIXはその後ヴォルフィード(1989年/タイトー)、ギャルズパニック(1990年/カネコ)といった多くの派生ゲームを産んでいますが、その原点を気軽に楽しめるのはこのゲームボーイ版なのではないかと思います。
(さらに気軽に楽しむのであれば、ニンテンドー3DSのバーチャルコンソールがおすすめです)
平安京エイリアン(1990年/メルダック)
奇しくも原作が79年、80年、81年の連続した年からピックアップとなりました。
最後にご紹介するのは「東京大学の理論科学グループ」という一見ビデオゲームからは縁遠そうな団体によって開発された平安京エイリアン。原作は1980年に電気音響からリリースされています。
平安京を襲うエイリアンを、道に穴を掘って落とし、そして埋めることで退治するというゲームになります。
「道に穴を掘って落とし、そして埋める」ゲームといえばロードランナー(1983年/ブローダーバンド)が思い出されますが、ロードランナーがサイドビューであるのに対し平安京エイリアンはトップビューであり、ゲーム性も大きく異なります。
自機である検非違使のアクションは掘る・埋めるということで、直接的な攻撃手段を持たないというのは、今にしても斬新でして、落とし穴というトラップをいかに張り巡らせるかという部分にゲーム性がありました。せっかくエイリアンを落としても、他のエイリアンが触れると助けられてしまったりと、なかなかに人間味があるといいますか「こっちは孤独なのに、向こうはうまいこと連携してくるなぁ」と思ったものです。
個人的には幸いにしてアーケード版を遊べる時代に生まれていましたが、それでも金銭的な事情などで頻繁に遊べるわけもなく、もっぱら学研から出ていたLSIゲーム版を、近所の友達の家で遊ばせてもらうというのがこのゲームの思い出でした。
こんなゲームがゲームセンターに行かなくてもでできるなんて……! と興奮したのを覚えています。
こちらについては当時のぼんやりとした記憶が、80年代Cafe様の「LSI GAME 平安京エイリアン ・学研/電気音響」でブワッと甦りまして、大変懐かしい気持ちになりました。写真付きの詳しい記事が素晴らしいのでこちらもぜひ。
LSIゲームから時は流れ、ゲームボーイ版がリリースされ、懐かしさに手を伸ばしてみました。こういったオールドゲームの移植にはよくあるのですが、いわゆるアレンジモードもありまして、でもやっぱり遊ぶのはオリジナルモードなのでした。
この「掘る・埋める」というゲームの核は、前述したロードランナーにもみられますし、後年ではキッドのホレホレ大作戦(1987年/日本物産)としてリメイクもされています。今回紹介しているゲームボーイでは、キッドのホレホレ大作戦の海外版タイトルやファミコン版タイトルである「ブービーキッズ」に似たタイトルの「ブービーボーイズ」として1993年に日本物産からリリースされています。
余談ですが、キッドのホレホレ大作戦は現在アーケードアーカイブスでプレイできます。
この「平安京エイリアン」当時の表現力は今にして思えばチープではあるのですが、丸腰でエイリアンに立ち向かう緊張感は非常によく現れており、今でもプレイしてみる価値のある一作ではないかと感じます。
駆け足でご紹介してきましたが、これらアーケードゲームの夜明けを彩ったタイトルたちの魅力がなかなか伝えきれずにいます。今回ご紹介したタイトルは2017年現在、店頭や各種通販サイトでもお求め安い価格になっていますので、気になったらぜひともプレイしてみてくださいね。きっとビデオゲームの原点となる楽しさを感じてもらえることと思います。
それではまた。