夢のゲームボーイドッキングユニット、ハイパーボーイのこと
先日帰郷した際に地元のゲーム友達と集まっていたところ、流れでそのうちの1人のご実家にファミコンコレクションを愛でにいくことになりまして、そこで出てきたのが初代ゲームボーイの機能拡張をする周辺機器「ハイパーボーイ(1991年/コナミ)」でした。
今回は、この「ハイパーボーイ」の稼働レポートと製品の背景について考えてみたいと思います。
そもそもハイパーボーイとは?
ハイパーボーイは、1991年にコナミが発売したゲームボーイ用の周辺機器です。ステレオスピーカー、ライト付き拡大鏡、ジョイスティックが一体化した筐体にゲームボーイ本体を差し込んで使うものになります。
ゲームボーイの弱点である暗い場所での視認性やアナログサウンドを補い、ジョイスティックで本格的なゲーム体験を、というコンセプトであることが見て取れます。
それにしてもコナミと言えばオリンピック、スポーツ、ラリー、ショット、クラッシュ、ビーム、などなど、割となんでもかんでもハイパーな感じですね。MSX版のグラディウスだといわゆるコナミコマンドじゃなくて、キーボードで「HYPER」って入力してパワーアップさせたのとか思い出します。
ステレオスピーカー
ゲームボーイ本体を挿入すると、ゲームボーイ本体底部のイヤホン端子と接続され、ハイパーボーイ本体のステレオスピーカーから出力されます。実際に音を出してみた感想としては、単純に大きな音が出る! というのが第一印象。音質に大きなこだわりがあるわけではないですが「音質が大幅アップ!というものではない」というように感じました。ただ、ゲームボーイ本体より大きく音が出せるので、迫力は十分です。音質ということで言えば、ゲームボーイ本体のヘッドホン端子からヘッドホンで聞いた方がスッキリするかなという気がするんですが、残念ながらハイパーボーイからは出力端子がありませんので、ドカンと大音量で響かせましょう。おそらくみなさんが想像しているより大きく爽快感のある音に驚くはずですよ。
ディスプレイ
1.5倍の拡大鏡に、2つのランプで明るく大きく画面を拡張します。初代ゲームボーイで遊んだことのある方はご存知の通り、ゲームボーイの大きな弱点の一つが、バックライトを備えない液晶ディスプレイでした。ゲームボーイを明るい画面で楽しむには、1996年のゲームボーイライト発売を待たねばならないのですが、一応のライバル機種であるゲームギア(1990年/セガ)、PCエンジンGT(1990年/NECホームエレクトロニクス)は大飯食らいではあるものの明るい画面を実現しており、その状況がゲームボーイ(を作る任天堂ではなく、それを遊ぶ側の)陣営に焦りとコンプレックスを抱かせていたという側面はあったのではないかと思います。
さて、ではこのハイパーボーイでの見え方はと言いますと、拡大鏡の内側上下にある暖色系のランプで意外にも良く見えます。2016年現在の各種端末から見ればもちろん「初代ゲームボーイをランプで照らしたもの」以上でも以下でもない、ということではあるのですが、見慣れたゲームボーイのディスプレイを思うと確かに大きく確かに明るい!というのは間違いありません。
実用に耐えうるかという部分ですが、拡大鏡での見え方に若干の癖があるため、多少の慣れと角度の調整は必要ですが、まぁまぁと言ったところでしょうか。動きの速いものが苦手なのはゲームボーイそのものの問題です。
ジョイスティック
外見上の大きな特徴でもあるジョイスティック。スティックの感触はさておき、まずはAB各ボタンのストロークが深いため、細かな操作には向かないなという予感がします。
このジョイスティック、予想はしていましたが、ゲームボーイ前面の各ボタンを物理的に押すという仕組みになっている都合上、どうしても遅延が発生します。
その一方、操作性が大きく向上するかと言えばそんなこともなく、正直なところ、なんとか普通に操作はできるけど実機で遊んだ方が操作性はいい、という感想です。しかしながら、拡大鏡ディスプレイおよび筐体と相まって、ゲームへの没入感という意味では大きく寄与していまして、一概にNGとも言い切れない何かを残しています。例えるなら、そう、駄菓子屋の軒先でアップライト筐体のゲームを遊んでいるかのようなあの感覚……!
総評と考察
実際に遊んでみた感想としては、事前の予想と大きく変わらず「がんばってみたけど、まぁやっぱり、うん」というところでしたが、ステレオスピーカーの大音量に関しては素直に高く評価したいところです。
ハイパーボーイ登場前夜とも言える1990年には拡大鏡「ワイドボーイ」や拡大鏡+ライトの「ライトボーイ」といったゲームボーイ本体の拡張アイテムが発売されています。これは、当時勢いのあったゲームボーイに乗っかろうという意図ももちろんあったと思いますが、特にライトボーイのような「暗い場所でもゲームボーイで遊びたい!」というニーズになんとか応えようとしたものだったでしょう。プレイヤー側として「暗いところでも」というニーズが発生するのは当然として、実はこういったアイテムはその親世代にも気持ちを向けていたのだろうな、と今更ながらに思うのでした。日々単三電池を消費し、昼も夜もなくゲームを続ける子どもたちに、せめて明るい画面で遊んで欲しいと買い与えたというケースも多かったのではないかと思いました。
2016年現在において「プレイ体験の向上のために購入する」というのはお勧めしませんが、実際に触ってみて強く感じるノスタルジーがあります。ただ、それは1991年のゲームボーイに対するノスタルジーではなく、1980年代のアーケードゲームに対するそれではないでしょうか。まだアーケードゲームの家庭用ハードへの移植が完全とは言いがたく、アーケードゲームへの憧れの強かったあの時代。こういったハードで、自宅に「ゲームセンター」を感じさせるアイテムというのは、また一つの憧れであったのかなと。
総評冒頭の「がんばってみたけど、まぁやっぱり、うん」という感想は、その姿形や成り立ちが「ゲームボーイがアーケードゲームみたいになるの!?」という当時の子供達の憧れと期待が大きすぎた故のものだと感じるのです。
結論として「ハイパーボーイ」は、真面目にゲームボーイを良くしようとした、家庭用ゲーム機でアーケードゲームの気持ちを目指した、大変グッとくる周辺機器でした。ずっと気になってたので、遊べてよかった!
余談:コナミハードのこと
話は冒頭に戻り、ファミコンコレクションを愛でる会でハイパーボーイ以外のコナミハードも見せていただいたのですが、1990年ごろのコナミは「グラフィックコンピュータ ピクノ」やLCDゲーム機も販売しており、ソフト以外の面についても力を入れていたんだなぁと知りました。LCDゲームは「コントラ」「ダブルドリブル」といったタイトルがあり、タイトルのセレクトがまたいいなぁと思った次第です。このあたり写真撮らせてもらえばよかったなぁ。
そして最後はハイパーボーイフォトギャラリーで〆です。
それではまた。