コナミアンティークスMSXコレクションのこと(後編)
コナミアンティークスMSXコレクションについて書き進めたところ、思いのほか長くなってしまいましたので、分割して後編としております。後編はVol.3について。いましばらくお付き合いくださいませ。
前編はこちら「MSXとコナミ名作タイトル群のこと(前編)」をどうぞ。
コナミアンティークスMSXコレクション Vol.3
- コナミのテニス
- コナミのサッカー
- コナミラリー
- ぽんぽこパン
- ピポルス
- 王家の谷
- 夢大陸アドベンチャー
- タイムパイロット
- パロディウス
- 沙羅曼蛇
さて過去の2作と違い、このVol.3はどういうわけかゲームアーカイブスでも配信されていない特殊なタイトルですが、困ったことに「沙羅曼蛇」「パロディウス」といったシューティングの名作、歯ごたえのあるアクションパズル「王家の谷」、けっきょく南極大冒険を下敷きに全く新しいアクションゲームに進化させた「夢大陸アドベンチャー」などを収録しています。ここでは是非みなさんにも遊んでみていただきたい「沙羅曼蛇」と「夢大陸アドベンチャー」について触れてみましょう。
沙羅曼蛇
グラディウス2に続く作品として、アーケード版とは似て非なるゲームとして仕上がったMSX版沙羅曼蛇。システム上の大きな違いとしては、既存のグラディウスシリーズおよびライフフォース(1986年・コナミ)と同じパワーアップカプセルによるパワーアップや、ミス時には規定の地点まで戻されるといった比較的馴染み深いものから、ステージ3〜5をプレイヤー自身で選択できるというシステム(余談ですがこのステージセレクト時の音楽がまたかっこいい!)や、まさかの2機合体システムなど、オリジナル要素が満載。
ただ本作は難易度も高く、左手の技術と右手の感性が充実していた当時ならともかく、2015年の今クリアしろと言われても厳しさを感じます。またクリアに関してはもちろん技術的な問題もありますが、当時の実機ではグラディウス2をスロット2に挿入して起動しないと(取得できないアイテムがあるので)バッドエンドという相当理不尽な事実もありまして、その事実に気づくまでの数度は苦労してエンディングを迎えてもせっかく設置したリークシステムを破壊されるという苦杯を嘗めさせられたものです。
幸いこのコナミアンティークスMSXコレクションバージョンではスロット2にグラディウス2をセットした状態としてプレイできるため、このような理不尽を味わうことはありませんが、当時を知るものとしてはきっとこのバッドエンドを体験した人とは熱い何かを共有できそうな、そんな気がします。
数多いグラディウスシリーズの中でも屈指のオリジナリティーと歯ごたえを持つ本作は、是非プレイしていただきたいタイトルです。
「コナミアンティークスMSXコレクション」としてのゲームアーカイブスでの配信はありませんが、プロジェクトEGGによる配信やWiiバーチャルコンソールによる配信がされているようです。私はいずれも試していないので詳細はわかりませんが、安価に楽しめる手段が残されているのは助かりますね。
夢大陸アドベンチャー
ベースとなっている「けっきょく南極大冒険」についてはファミコン版で触れたという方も多いかと思いますが、原作はこちらMSXでのI LOVE シリーズの「I LOVE 地理」としての本作となります。これは当時では珍しいMSXから他機種への移植タイトルでもありました。
さてそんな「けっきょく南極大冒険」は比較的のんびりとしたゲームで、スケーターズワルツのメロディーに乗せて時間内にゴールへ向かうというのどかなものでした。が、しかし。続編となる本作ではグッとゲーム性を高めて現代でも十分に通用する名作アクションとして生まれ変わります。
大まかなストーリーとしては、不治の病に倒れたペン子姫のため、万病を治す夢大陸のゴールデンアップルを求めて旅立つ、というものです。ここでポイントとなるのが、目的の1つ「ゴールデンアップルの入手」までがステージ12まで、つまり往路となり、ステージ24までは復路となるということです。つまり、このゲームの目的はゴールデンアップルの入手、そしてゴールデンアップルをペン子姫に届けるという2部構成になります。漠然と「敵を倒す」というようなものではなく、当時の時代背景やゲームというもののストーリーの作られ方を考えると、なかなかにエポックメイキングな1作だったと言えるのではないでしょうか。
ゲーム本編は奥方向へ進む3人称視点として進み、地割れなどの障害物や敵キャラクターを避けてゴールを目指します。この中でアイテムとして現れる魚を通貨に、小さい地割れから進めるショップで装備を整えることでプレイヤーの運動性能や防御力が上がり有利に進めます。中でも「けっきょく南極大冒険」のイメージを覆すのが武器「ガン」で、当然の性能と言える敵を撃って倒すという行為に微妙な罪悪感を覚えたものです。
3ステージごとに現れるフリーザウルスとの対決、バラエティに富んだステージ構成に加え、多彩なアイテムによる攻略が本作のキーポイントでしょう。
これらのアイテムは店で買えるものの他に隠しアイテムとしても存在しており、1986年当時という隠し要素が受け入れられた時代においてもなかなか情報を得ることができず、プレイヤーは苦労しました。当時の唯一の情報源はコナミが出版業界に進出した雑誌「Nan?Da」の創刊号(だったか創刊2号だったか)に綴じ込み小冊子としてついてきた攻略本しか無く(MSX・FANは創刊前。MSX Magazineは購読していましたが攻略記事は出なかったと記憶しています)、これを片手にクリアを目指しました。
現代であれば攻略サイトなどでの情報収集・情報交換も比較的容易な環境ですが、当時はよく頑張ったものです。
こうして巧みな難易度の全24ステージをクリアしたところ、実は本作にはバッドエンドが存在します。これまた沙羅曼蛇に勝るとも劣らぬ不条理な条件がありまして、これを満たさないことにはなんというかペン子姫がその……。はい。沙羅曼蛇に先駆けてクリア時に「はあ〜!?」と叫んでしまった苦い思い出がありますが、グッドエンドでペン子姫を救うことができたときには喜びもひとしおでありました。
なぜVol.3は配信されないのか問題について
前述の通り、このコナミアンティークスMSXコレクション Vol.3はシリーズで唯一ゲームアーカイブスでの配信がありません。
このような配信できないソフトには往往にして権利問題が絡んでいそうなものですが、沙羅曼蛇や夢大陸といった主要タイトルは他のサービスで配信されており、大きな問題にならないように思えます。
一番あやしいと言えるのは「コナミラリー」で、本作は当時「ハイパーラリー」というタイトルでした。同じコナミのMSXソフトである「F1スピリット(1987年)」が後年「MSX RACING SPIRIT」と名前を変えて音楽配信されたように「ラリー」に何か問題があるかと思ったのですが、そもそも残すなら「ハイパー」の方でして、いささか不可解と言えます。
しかし、少し調べたところプレイステーション用のソフトとして「ハイパーラリー(ハーベストワン・1996年)」というタイトルが存在しており、こちらが問題になったのではないかと想像しています。……あくまで想像です。うーん、でも違いますよねぇ、きっと。
これだけの名作が楽しめるVol.3ですので、なんとか配信されると良いなぁと思います。
そのほかにも数々の「MSX x コナミ」が……
残念ながらコナミアンティークスMSXコレクションには収録されなかったものの、他にも名作と呼べるものはたくさんあり、パッと思いつくだけでも魔城伝説トリロジーの2,3作目となる「ガリウスの迷宮」「シャロム」や先ほど名前が挙がった「F1スピリット」(これらはキーボードを使用するパスワード制であったため収録されなかったとか)、MSX2用としては王家の谷の続編である「エルギーザの封印」、喜怒哀楽の要素をゲームに取り入れた異色のアクション「ウシャス」、MSX完全オリジナルシューティング「スペースマンボウ」などなど、時代の波にさらわれるには惜しくて仕方がありません。
幸いプロジェクトEGGやバーチャルコンソールでも遊べるタイトルがありますので、なんとか遊び継いでいきたいものです。
あのころMSX、そしてコナミと共に熱くなった方も、こんなの知らなかったという方も、是非一度手にとって遊んでいただけるといいな、と思います。ビデオゲームの面白さは時代を超える、ということをきっと体感していただけると確信しています。
それではまた。