「LSIゲームの記憶」とPlaydateのこと
2019年6月10日、YouTube「DRIKIN VLOG」にて「【独占インタビュー】なぜ今、モノクロゲーム機PlaydateをPanicが作る理由」という動画が公開されました。
パニック・ジャパンの長谷川さんを迎え、Playdateについての独占インタビュー。まさに「世界初案件」ということで、Playdate開発の経緯から近況まで語られています。
ともあれ、興味深いキーワードが盛りだくさんの動画を、まずはご覧ください!
Playdateを形作った「記憶」
この動画で長谷川さんから語られた言葉の端々から「Playdateとは何か」が垣間見えてきました。
中でも最も興味をひかれたのは、この言葉でした。
(ゲームボーイ的なスピリッツを現代に持ってきたように感じた、というお話を受けて)
自分たちでゲームで何かしたいなと思った時に、自分たちの記憶のところにはLSIゲームだったりとか、いろんな玩具メーカーからLSIゲームがいっぱい出ていて、おもちゃ屋さんのショーケースにLSIゲームがバーって並んでてそれをずっと「あー、欲しいな」で、そのあとゲームウォッチが出てっていう。
当時のLSIゲームを知る者としては、その気持ち、すごくよくわかります。LSIゲームって、まだ「ゲーム」というよりは「おもちゃ」と地続きだった頃なんですよね。その頃の全く新しい遊びに触れた感動だったり、ゲームを介して生まれたコミュニケーションだったりっていうのは、世代のせいもあってかすごく大事な記憶で。
そしてこの後、長谷川さんからはそのLSIゲームの記憶があって、ゲームを作るにあたって、モバイルフォンなどのタッチスクリーンでは再現ができない、そこでどうやったらできるの、というところから開発が始まったというエピソードが語られます。
Playdateの原点は「ゲームボーイ」ではなかった!
Playdateのフォルム、(クランクを除く)操作系統から、ゲームボーイへのオマージュを感じた方は多かったのではないかと思います。自分もまたその一人でした。
ですが、実はもう少し時代がさかのぼって、LSIゲームの記憶がPlaydateの遺伝子には組み込まれていた! これを聞いて、Playdate発表時の少しもやのかかった感じ(なぜ今、このスタイル、モノクロディスプレイで新しいゲームを作ったのか)が晴れていきました。
この「LSIゲームの記憶」こそ、これまでのPlaydateの情報のセンセーショナルな部分に隠れていた本質であるような気がしてなりません。
物理ボタンのためにハードから構築。でもそれで実現できるのは物理ボタンだけじゃない
過去、スマートフォンでのゲームが盛り上がり始めたころというのは、クラシックなアーケードゲームやコンシューマゲームをタッチデバイスの上で動かすに当たって、デジタルパッドが実装されていましたが、次第にそういった流れも減っていったように思います。もちろんPUBGモバイルなどで見られるようにデジタルパッドも十分活用されていますが、いわゆるクラシックなビデオゲームを再現するにあたっては、あの物理ボタンでの操作感が再現できなかったというのもスマートフォンのアプリでのクラシックゲームの縮小の理由の一つであったと思うのです。
そう考えると、物理ボタンが必要なのでという理由でハードごと作るというのは、豪気であるなと思う一方至極当然の流れであったとも感じるわけです。
LSIゲーム、ここではあえてゲーム&ウオッチを例にしますが、そのコンセプトはかの横井軍平氏による「暇つぶしのできる小さなゲーム機」でした。
Playdateは、今あえてハードから作り出すことで、この「暇つぶしのできる小さなゲーム機」に「持っていて楽しい」「2020年の技術で作る最新のクラシックスタイル」という要素を盛り込んだのではないでしょうか。
原点がLSIゲームにあると考えると、ゲームボーイよりもさらにミニマルなスタイルにも合点がいきます。
ふとした瞬間にさっと楽しむには、このくらいがちょうどいいという感覚、そして、誰もがスマートフォンを持っている時代にあえてもう一台持つゲーム機だからこそ、奢った機能よりも手軽さに舵を切ったのではないかと感じます。そんなミニマルなハードはteenage engineeringによるスマートかつキュートなデザインに包まれることで「持っていて楽しい」し「持ちたくなる、見せたくなる」ものになりました。これは単純にスペックでは語れないエモーショナルな価値ですが、だからこそわくわくしてしまいます。
そしてゲームハードとしての性能を、あえて現在のビデオゲームと競合しない、今時の基準からするとある意味デチューンされた形にすることで「知っているのに新しい」という感覚を生み出しているのではないでしょうか。
根っこの部分にLSIゲームの記憶があるとしても「eインクっぽい」という液晶は、当時の液晶セグメントに縛られたゲーム作りからは解き放たれ、しかも約40年にわたり世界で積み上げられたゲーム作りのノウハウと組み合わさることで、現行のゲームハードではできないチャレンジができる環境にあります。これにもわくわくしてしまうのです。
余談ではありますが、Playdateの大きな特徴であるクランク、これを見たときに「釣りゲーム」のリリースを想像される方は多いのではないかと思います。が、自分個人の思いとしてはむしろ逆で、ゲーム制作者の方は「絶対に釣りではない面白い使い方をしてやろう!」と思っているのではないかと。そんな気がするのです。
「DRIKIN VLOG」動画には、Playdateの新たな情報も
他にもサラリと「振動機能は無い」ことや「クランク動作時の音のこだわり」など、この動画での初出し情報や開発の思い、将来的な展望なども語られています。あっという間の37分、すでに何度も見返してしまっていますが、Playdateが気になる方なら要チェック!なのです。
最後に、長谷川さんが素敵な表情で言われた一言を。
ポチポチしたり、クルクルしたり、ポッケに入れたいなっていう
Playdateを待っているみんなが思っていることを、作り手も同じく思っている。それって幸せな関係だなと。
きっと少しずつ明らかになるPlaydateの姿、これからも楽しみにしていきたいと思います。
それではまた。
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